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渥美清的映画
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拝啓天皇陛下様

松竹/99分/1963年(昭38)4月28日公開
原作 棟田博 脚本 野村芳太郎・多賀祥介 監督 野村芳太郎
撮影 川又昂 撮影助手  高羽哲夫 音楽 芥川也寸志
共演-長門裕之・左幸子・桂小金治・西村晃・加藤嘉・藤山寛美・高千穂ひづる・中村メイコ



★渥美清主演映画の第三作目。
「男はつらいよ」以外の渥美清の代表作でもある。また映画としてもかなり面白く完成度も高い。
長門裕之、藤山寛美はじめ芸達者が揃っていてその演技を見ているだけでも楽しい。
渥美清は三度の飯が必ず食える軍隊が大好きな無学な男、山田正助、山正を演じる。

原作は週刊現代に連載されたもの。軍隊内の悲哀溢れるエピソードを点描しながら語り部である「私」こと長門裕之と渥美清の交友が20年に渡って描かれている。

「戦争コメディー」の部類に入る映画だが野村芳太郎・川又昴はじめスタッフは決して手を抜かない。野村監督は実際陸軍少尉だったそうだ。砲撃シーンや突撃シーンなど立派な「戦争映画」の1シーンとなっている。 行軍途中に戦死した戦友の片腕を日常の中で焼いているシークエンスにはぞっとする。戦後18年経ってもまだまだ生々しい記憶がスタッフの心には残っているのだろう。

とりわけ印象的なのが大演習のシーン。山の中腹まで人垣が出来ているロングのカットは圧巻だ。当時はCGもなく外ロケなので書き割りでもない。地平線の遙か彼方まで人影が立ち並んでいる。数百人のエキストラだろう。当時の日本映画、撮影所映画の底力を実感出来るカットでもある。

このシーンでは山正が本物の天皇の“実物"を見る
ここで渥美清は天皇陛下に恋をしてしまう。
「ひゃあー、あれが天皇陛下様かー」「あっ?ありゃ誰かに似とるわい。・・・イヤイヤいけん、神様似とる訳無いわい・・・あーでもよう似とるのー・・・何と優しい顔をしとんなさるんかいのー・・・あれじゃーちっとも怖いことありゃせんわいー」

戦後になっても山正と長門の交友は続く。
山正は言う「・・・わしゃ内地帰って腹立っとるんじゃ。内地のやつら戦争負けた事なんて何とも思っとらん。カエルの面に小便じゃ、なー、米よこせ何て天皇陛下の所へ押しかけてとるんじゃ」

その後未亡人に恋した山正が一人勝手に妄想してまう所は「男はつらいよ」の原型を見ることが出来る。翌年に製作された山田洋次監督「馬鹿まるだし」も主演のハナ肇が未亡人に恋する下りがあるが、戦時中に死んだ夫と同じ部隊に居たと嘘を言って未亡人の関心を惹くところはそっくりである。

エピソードの積み重ねで一番幸せなのは山正が中村メイコ演じる恋人を連れて長門宅に来るシーンだろう。二人は結婚をする予定なのだ。幸せ絶頂の次のシーンは映画の定石通り山正の死の知らせのシーンである。山正は酔っぱらって多分駐留米軍の所属であろう大型トラックに轢かれて即死してしまうのだ。

ラスト、文字スーパーがダブる。

「背景天皇陛下様。
陛下よ。あなたの最後のひとりの赤子が、この夜、戦死をいたしました」

芥川也寸志作曲のオルゴールの曲が、山正の天皇陛下に恋焦がれるしかなかった、時代遅れの儚い人生を象徴しているようで非常に秀逸だ。



<参考文献「知られざる渥美清」大下栄治「おかしな男渥美清」小林信彦>
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