直線上に配置
バナー

渥美清的映画
------------------------------------------------------------------------------------------

男はつらいよ 純情篇

松竹/89分/1971年(昭46)1月15日公開 <第6作>
原作 山田洋次 脚本 山田洋次・宮崎晃 監督 山田洋次
撮影 高羽哲夫 音楽 山本直純 美術
共演-倍賞千恵子・森川信・三崎千恵子・前田吟・太宰久雄・笠智衆
ゲスト-若尾文子・森繁久彌・松村達雄
併映『やるぞみておれ為五郎』監督:野村芳太郎 出演:ハナ肇、光本幸子
動員数85万2000人/ロケ地・長崎・五島列島

第26回毎日映画コンクール・監督賞/山田洋次
第22回芸術選奨・文部大臣賞/渥美清
TOP
Back Next



★「男はつらいよ」シリーズ第6作目。

前作は夢のシーンから始まったが今回は夜汽車に乗った寅次郎から始まっている。
タイトルバックは珍しい江戸川から柴又界隈のヘリコプターからのエアーショット。
カメラマンが別人なのかズーム操作が非道いカットが多い。

映画は長崎の港から始まる。五島列島へと渡ろうとする寅が宮本信子演ずる子持ちの女と知り合う。成り行きで同じ宿に泊まる事になり、宮本の不幸な身の上を聞かされる。
翌日島へと渡り、森繁久彌演ずる父親と娘の確執を目の当たりにする寅。森繁の出演シーンはセット撮影だからだろうか、余り印象には残らない。せっかく稀代の名優二人の顔合わせなのに、とても残念だ。やがて急に里心湧いた寅は最終の船で葛飾柴又へ帰って行く。

寅の部屋には亭主持ちの訳あり女が引っ越してきたばかり。それを演じるのは大映の看板女優であり、当時はテレビで活躍し始めた若尾文子、37歳。当然若尾を見た寅は一目惚れしてしまう。

若尾文子は1933年東京都豊島区生まれのこの時38歳。亡夫は建築家の黒川紀章。
1951年に大映の第5期ニューフェイスとして映画界入り。翌年、急病で倒れた久我美子の代役として、小石栄一監督の『死の町を脱れて』で銀幕デビュー。1953年に映画『十代の性典』がヒットし、マスコミから性典女優と酷評されるも知名度は急上昇。それ以降も出演作を重ね人気女優としての地位を築き映画『祇園囃子』(1953年)では溝口健二監督に起用され、女優としての実力を発揮し、性典女優の汚名を返上、熱演が高く評価された。以降、日本映画を代表する正統派美人女優の一人となり、京マチ子、山本富士子と並ぶ大映の看板女優と謳われ、160本以上の映画に主演した。和服姿の艶やかな美貌から、未だに海外での人気が高い。 川島雄三により、本格派女優に鍛え上げられた。
増村保造とは、監督第2作目の映画『青空娘』以降、『清作の妻』『妻は告白する』『赤い天使』『「女の小箱」より 夫が見た』『刺青』『卍』『妻二人』『千羽鶴』など、20作にわたってコンビを組み、多くの名作映画を残した。
そして両者に鍛え上げられた若尾は、1960年代半ばに各映画賞を総なめにするなど、戦後日本映画を代表する女優となる。
大映倒産以降は映画を離れ、NHK大河ドラマ『新・平家物語』(1972年)などテレビドラマを中心に活躍。また、『雪国』(川端康成原作)で舞台にも進出。特に1988年の『武田信玄』では信玄の実母及びナレーションをこなし、「今宵はここまでに致しとうござりまする」が流行語大賞を受賞するなどして再び注目される。
1963年にデザイナーと結婚したが1969年に離婚、1983年に黒川紀章と再婚してからは、テレビドラマの出演はやや抑え気味になり、2007年現在は舞台を中心に活躍。
。黒川紀章との結婚は1976年にテレビ番組『すばらしき仲間』で対談したのがきっかけ。そのとき黒川は若尾に「君はバロックのような人だ」とその美貌をバロック美術に例えた。黒川は既に結婚しており、娘が20歳になるまで黒川の妻が離婚に応じなかったため、若尾との結婚まで7年がかかった。
芸能リポーター・前田忠明との単独インタビューで、前田がインタビュー中必要以上に年齢(インタビュー当時、若尾は50歳)を強調した質問(「50歳を迎え…」「50にしてなお…」など)を幾度もしたことに怒り、インタビュー途中夫の黒川紀章が亡くなる2日前に、若尾が「私、あんまりいい奥さんじゃなかったわね。」と問うと、「そんなこと、そんなこと、そんなこと(ない)! 本当に(君が)好きだったんだから」と黒川に言われたのがふたりだけの最後の会話になったという。このエピソードは黒川が死去した翌日、自宅マンションに詰め掛けた報道関係者に対してインターフォン越しに語ったもの。

この回の寅の恋心はあまり面白くない。見ていて応援する気にならない。「また寅の病気が始まった」とおいちゃんのセリフが何回も出てくるが、ホント病気に見えてしまい、寅の純真さとか一途さより「頭が少し足りない」風に見えてしまう。

その中でタコ社長の自宅のシーンが大いに笑わせる。
太宰久雄演ずるタコ社長のコメディーリリーフとしての役割が、ツボにはまって出色の出来だ。
そしてこの回くらいから、日本の原風景を映像に残そうと言うスタッフの意図が画面から感じられる。五島ロケでの遠景を進む漁船とか路地裏の子供達とか、非常に丁寧に時間を掛けてロケ撮影をしているに違いない。

そしてラストシークエンス、宮本がよりを戻した亭主を連れてとらやに年初の挨拶に来ている。宮本は五島の父親に電話する。森繁は声には出さずに娘の再起を喜び電話を切る。森繁のそばには寅からの年賀の挨拶状が置かれてある。そしてラストシーンは寅が浜名湖で商売する姿で終わる。

画面が五島のシーンに移ったとき、森繁の横には寅が居るのではないかと予感するのだが期待は裏切られる。寅から年賀状が来ているのはとても不自然だ。一度しか、それも数時間しか会っていない関係で、心うち解けたやり取りもしていないのだから。
森繁のスケジュールの関係とかで実現出来なかったのかもしれないが、ラストに寅と森繁が再会していたら良いラストになっただろうと思う。

今回はせっかくの森繁や若尾の魅力を十分に生かせずに残念な結果となった。




<参考文献「知られざる渥美清」大下栄治「おかしな男渥美清」小林信彦>
TOP
Back Next
弊社の配信するコンテンツ・動画等の整合性・信頼性に関しては万全を期しておりますが、
それにより生じた損害に対しては一切 の保証を負いかねます。
弊社が提供するコンテンツを無断で複製すると、著作権侵害となります。
Copyright (C) 2006, zeicompany. All rights reserved.
Free to Link
直線上に配置